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次の誘いは断られることがないように

anam.

 熱い息を吐きながら恋人のナカから硬さのなくなった陰茎を出す。

 出す時に感じる場所に当たったのだろう恋人の小さな嬌声を聞きながら、水晶公の紅い眼は先ほどまで自分が入っていた場所に向いていた。

 荒い呼吸で上下する肉付きの良い下腹部。

 先程まで自分のモノで蹂躙していた場所。

 水晶公は右手を上げるとそっとそこを撫でた。

 孕ませたい。

 今力なくしなだれている陰茎を包んでいる膜を外して最奥まで突いて自分の種をぶちまけたい。

 そこまで考えて水晶公はハッと我に返ると小さくかぶりを振った。

(この状況でそんなことできるわけがないだろう……)

 自分と恋人の現状を考えればそれができる状態でも状況でもない。

(欲しいものを手に入れすぎて、さらに欲が先走ってるぞ。しっかりしろ)

 そう理性で制しようとするものの、行動は欲望に忠実に動く。

 水晶の手がもう一度恋人の腹を撫でる。

 そんな男の姿を淡いみどりの目はじっと見つめていた。

 

 

「ゴム無しでやってみる?」

 そうエミに問われたのは、寝具を整えてさあ寝るぞという間際のことだった。

 枕を並べて顔を見合わせて他愛ない話をしていたエミからの発言に水晶公の耳と──彼女からは見えないが──尻尾がピンと立ち上がった。

「えっと、それはどういう?」

「そのまんまの意味だけど……もっとはっきり言った方が良い? 中だ……」

「待ってくれ! 意味は、意味は分かっているから……!」

 あけすけな言葉が恋人の口から出ようとしたので水晶公は思わず止めるがその表情は非常にバツの悪いものになっていた。

「…………気付いてた、か?」

「そりゃあんだけお腹をガン見されて撫でられてれば、ねぇ」

「……だよなぁ」

 しおしおぺたんと耳が下がる水晶公を見てエミは小首を傾げた。

「やってみる?」

「やらない」

 エミの問いかけにはっきりと水晶公は否定を返した。

「どの口が、と思うかも知れないが、やらないぞ。あなたも見て見ぬふりをしてくれると助かる」

 否定を口にしている自身に呆れているのだろう。苦笑を浮かべる水晶公を見てエミはしばらく逡巡したあと、

「確かにこの状況で万が一があったら困っちゃう、か」

 そう口を開く。

 第一世界での戦いはエミ達の道が続くと言う結果で終わったが、暁の仲間達の帰還方法などまだまだやるべき事はある。

 妊娠だ出産だ、などやっている場合ではない。

 エミの言葉に水晶公は大きく頷いた。

「そういうことだ。私の今の体に生殖能力があるか不明な状態である以上、迂闊なことはできない。万が一あなたが妊娠してしまった場合、身重で二つの世界を行き来できるかどうかさえ、分からないのだから」

 塔の一部となって人ならざるモノになったものの欲求を含め最低限の身体の機能が働いている以上、不安要素は排除していくべきだろう。

 水晶公の言葉にエミは納得すると気まずそうに顔の下半分を掛け布団に隠した。

「ごめん、軽率だったかも……」

「いや、軽率だったのは私の方だ。あなたが気を悪くする必要はない。それに、あともう一つ理由があるんだ」

 掛け布団に顔を隠して申し訳なさそうに上目遣いで見つめてくるエミの目尻を左手の指の背でそっと撫でつつ、どこか照れくさそうに水晶公は微笑んだ。

「こう言う事は、あなたときちんと夫婦になってから。そう思ってるんだ」

 我ながら青臭いというか堅苦しいとは思うのだが。

 そう言って苦笑を浮かべる恋人に、エミは一瞬目を丸めたがすぐにみどりの目を細めた。

「ううん。なんかラハっていうか水晶公らしいって思うし、良いと思うよ」

「そうか」

 水晶公が小さく息をつくのを見て、エミは小さく頷いた。

「うん。でもそっかぁ……。婚前交渉は水晶公の望むところではない、と」

「まあ、そうだな」

「みんなへの示しが付かない的な?」

「──どちらかと言うと、揶揄われそうでな」

「あー……」

 エミから視線を外し目を泳がせて歯切れ悪く伝えてくる水晶公にエミは気の抜けたような声で返した。

 確かにクリスタリウムの人々なら嫌悪よりも好意的なからかいの方へ行くだろう。

 その対象が敬愛する水晶公ならば、なおさらだ。

「だから、その」

 かすかに戸惑う声を上げながら水晶公の視線が再びエミに戻る。

「うん」

「いつか、目の前にあることが全て終わったら……終わったらで良いんだ」

「うん」

「……その時に、また誘ってくれると、嬉しい。──ああいや、誘ってもらうというのもあれな話だな、しかし私から言うのもそれはそれで……」

 どこか申し訳なさそうに、困ったように。

 しかししっかりと自分の気持ちを伝えてくれたにもかかわらず、いろいろ考え出してしまう心配性な恋人にエミは声を弾ませて答えた。